人生の中で、脅かされたという場面は、あると思います。
脅迫被害解決のエキスパートとしての長年の経験から解説したいと思います。
脅迫罪の成立
刑事事件での立件は、ハードルは高いと思います。
ケース別に解説したいと思います。
①
あからさまな、
殺す!
半殺しにする!
ボコボコにする!
歩けないないようにする!
手足を折らせてもらう!
等の身体的危害を加える脅迫言葉なら、完全アウトです。
但し、実務的には、口頭で言われたなら、
証拠がないので、刑事事件としての立件は難しいです。
相手から、そんな事言ってない と言われたら、証拠がありません。
なので、上記のような脅迫言葉は、
明らかな証拠が必須です。
脅迫言葉の録音や録画があればベストです。
他にもメールやLINE、SNSで記録があれば証拠になります。
②
お前の事は一生許さない!
脅迫罪としての立件は難しいです。
録音や録画、メールやLINE、SNSで記録があったとしても立件は出来ません。
③
暗い夜道に気をつけろよ!
ただ、この言葉を言われただけでは、脅迫罪として立件は難しいです。
相手に、脅かすつもりはない!最近は物騒な事件が起きているから、気をつけろと言っただけと言われたら、立件は困難だと思います。
但し、脅かすつもりで、言ったと、録音や録画、メールやLINE、SNSで記録が取れたら立件は出来ると思います。
④
ネット上で、〇〇 お前逃げているだろ 必ず探し出すからな!
実質、脅迫していますが、刑法上の脅迫罪として立件出来る内容ではありません。
⑤
不倫しているのをばらしてやる!
この言葉は誰にばらそうとしているのかが問題です。
不倫していることを会社の人たちにばらす!
実質、脅迫していますが、刑法上の脅迫罪として立件出来る内容としては、微妙です。
何故なら、会社で不倫を禁じている会社もあるからです。
不倫が発覚したら解雇される規定を作成している会社もあります。
そうなれば、ばらすという行為は、会社の規定に違反している人間を通報するという正しい行為とも見れます。
不倫していることを近所の人たちにばらす!
刑法上の脅迫罪として立件される可能性があります。
貴方の奥さんに、不倫していることをばらす!
貴方の旦那さんに不倫していることをばらす!
実質、脅迫していますが、刑法上の脅迫罪として立件出来る内容ではありません。
よくある相談の実例で
例えば貴方自身が不倫しているとします。
そして不倫相手と別れたくて、不倫相手に別れ話をしたら、不倫相手から、貴方の旦那さんに不倫していることをばらす!貴方の奥さんに不倫していることをばらす!
と言われたとします。
このシチュエーションで、脅迫された!と相談される方が多いですが、刑法上の脅迫罪として立件出来る内容ではありません。
⑥
ネット上で、〇〇 お前連絡してこなければ会社に行って話をさせてもらうからな!
ネット上で、〇〇 お前連絡してこなければ自宅に行って話をさせてもらうからな!
実質、脅迫していますが、刑法上の脅迫罪として立件出来る内容ではありません。
上記は、一例です。
脅迫罪
刑法第222条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
1、脅迫罪とは
まずは、脅迫罪の概要と構成要件について説明します。構成要件とは、条文上に記載されている、犯罪が成立するための原則的な要件をいいます。
脅迫罪は人を脅して怖がらせる犯罪で、個人の意思の自由を守るために設けられています。人を怖がらせるだけで裁きを受けるのかと思われるかもしれませんが、刑法第222条に規定されているれっきとした犯罪です。
罰則は「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」と、懲役刑も用意されています。なお脅迫罪には未遂の規定がないため、未遂は処罰されません。
構成要件には、実行行為、結果、故意などがあり、それぞれ脅迫罪が成立するための条件が規定されています。
脅迫罪の実行行為は、被害者本人またはその親族の「生命」「身体」「自由」「名誉」「財産」に対し、危害を加えることを伝える行為です。これを「害悪の告知」といいます。これら5つのいずれにも該当しない内容の言葉を伝えたとしても、それは脅迫罪にはあたりません。
また対象は本人と親族のみです。たとえば恋人や教え子に対して害悪の告知をしても、原則として脅迫罪にはならないわけです。
結果は、本人やその親族を対象として害悪の告知がなされることです。仮に相手が恐怖を感じなくても、ただ告知しただけで結果が生じます。また脅迫の程度は、相手が恐怖を感じるかどうかではなく、一般の人を基準として恐怖を感じる程度が必要です。たとえば「天罰が下るだろう」などコントロールできないことを伝えても一般の人は怖がらないと考えられるため、脅迫にはあたりません。
故意とは認識をしていることですが、ここでは加害者に、害悪を告知する認識があることを指します。相手が怖がるかどうかまで認識している必要はありません。
次項では害悪の告知について、さらに掘り下げて解説しましょう。
2、脅迫罪になる告知の種類
告知の種類別に、どのような言動が罪にあたり得るのかをご紹介します。
• 生命への害悪告知
• 「殺してやる」「両親の命はないぞ」「奥さんとガキをあの世に送ってやるわ」などの言葉を用い、命の危険を感じさせる行為は脅迫罪に該当する可能性があります。
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• 身体への害悪の告知
• 「ボコボコに殴るぞ」「爪をはぐぞ」「目を失明させてやるわ」といった言葉で、身体への危険を感じさせる行為は脅迫罪に該当する可能性があります。
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• 自由への害悪の告知
• 「子どもを誘拐出来るぞ」「ここから無事で帰れると思うな」「お前をこの部屋に閉じ込めるぞ」など、行動の自由を奪うことを伝える行為は脅迫罪に該当する可能性があります。
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• 名誉への害悪の告知
• 「お前の恥ずかしい写真をネットに流出させるぞ」「マスコミに言うぞ」といった名誉に関する言葉は脅迫罪に該当する可能性があります。また告知する内容が真実かどうかは関係ありません。
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• 財産への害悪の告知
• 「車をつぶすぞ」「家を燃やすぞ」など財産を奪うことを伝える言葉は脅迫罪に該当する可能性があります。一緒に住んでいる動物も法律上は財産となるため、「お前の犬を殺す」といった言葉も含まれます。